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皆さんこんにちは。
taneCREATIVEの「ちほうタイガー」です。
この記事は、Web担当者の皆様向けに、改正障害者差別解消法とウェブアクセシビリティについて基本情報を解説したもので、2025年1月8日に改訂しています。
当社のクライアントは上場企業グループ様が多いのですが、改正障害者差別解消法への対応として、ウェブアクセシビリティへの準拠について、各社様真剣に取り組まれております。
そこで、企業のWeb担当者の皆様向けに、改正障害者差別解消法とウェブアクセシビリティに関する基本情報をリバイスしたいと思います。
なお、内容については、各省庁のガイドラインを勉強して記載しておりますが、各社における改正障害者差別解消法への対応を決定するに際しては、各企業の法務部、顧問弁護士によるチェックを受けてくださいますようお願い申し上げます。
少しでも皆様のお役に立てる記事にできればと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
障害者差別解消法は、障害を理由とする差別を解消し、誰もが分け隔てなく共生する社会を実現することを目的とした法律(障害者差別解消法1条)で、①障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止、②環境の整備(事前的改善措置)、③合理的配慮の提供という3つの柱を有しており、特に③の面から、ウェブアクセシビリティへの配慮にも関係する法律です。
この障害者差別解消法ですが、2024年(令和6年)4月1日付けで改正法が施行されました(本記事では、これを改正障害者差別解消法と呼ぶこととします)。
改正前の障害者差別解消法では、民間事業者は、障がいを持たれている方に対する「合理的配慮の提供」について努力義務を負っていました。
しかし、改正障害者差別解消法では、次のように法的義務とされています。
事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
2024年11月13日現在、この「合理的配慮の提供」に関する法的義務化とウェブアクセシビリティへの対応については、多くの上場企業様にて、ルールの策定を完了され、Web制作会社である当社の方に与件として降りてきている状況ですが、当社の予想よりはるかに真摯に取り組まれていると感じています。
例えば、ウェブアクセシビリティへの対応は「環境の整備」であって「合理的配慮の提供」には該当しないとして、法的義務ではないと解釈することができるから、ウェブアクセシビリティに対応する必要はないという方針をとることも考えられますが、当社のクライアントである多くの上場企業グループ様の対応を見る限り、そのような論理は取られておらず、むしろ厳しい社内基準を定められているところが多い状況です。
その理由を伺ったところ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針によれば、「各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる」ことから、合理的配慮の提供義務と環境の整備は相関関係にあるからとのことでした。
同基本方針の次の例に合わせて説明してみましょう。
オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める 申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う(環境の整備)。
上記の例で、環境の整備であるウェブアクセシビリティが不十分であれば、「手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う」ことが合理的配慮の提供として法的義務となります。
2024年4月以降は、こういったケースで個別対応をしなければ、コンプライアンス違反になる可能性があることが示唆されています。
一方で、「合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いもの」ですので、環境の整備に該当するウェブアクセシビリティを十分に対応しているという具体的な状況では、同じ行動をとったとしても合理的配慮の提供義務に反しているとは判断されにくくなると解釈できます(上記の例であっても、仮にウェブアクセシビリティ対策が十分であれば、電話や電子メールでの個別対応をしなかったとしても、合理的配慮の提供義務に反したと判断される確率は低くなるということのようです)。
また、ウェブアクセシビリティに関しては、今後厳しくなることはあっても、緩くなることは考えにくいので、リニューアルの際には対応しておくべきという理由もお聞きしました。
当社としても上記に同意いたします。
デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」によれば、ウェブアクセシビリティとは「利用者の障害の有無やその程度、年齢や利用環境にかかわらず、ウェブで提供されている情報やサービスを利用できること、またはその到達度」を意味しているとされており、ウェブアクセシビリティが担保できている状態とは、具体的に次のような状態になることが望まれるとされています。
① 目が見えなくても情報が伝わる・操作できること
② キーボードだけで操作できること
③ 一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
④ 音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること
一方で、同ガイドブックには「よくある誤解」として2つの勘違いが示されています。
1つ目は、「文字サイズ拡大ボタンやカラーテーマ変更ボタンのようなユーザー補助のための機能を設置すれば、アクセシビリティが向上できると勘違いすること」です。
2つ目は、「ウェブアクセシビリティの自動チェックツールを使ってページやサイト全体をチェックして改修することだけがアクセシビリティ向上の方法であると勘違いされていること」です。
この「よくある誤解」は、Web制作の現場にいるわたしたちからすると真実であり、非常に示唆に富むものですので少し掘り下げてご紹介してみます。
例えば、Webサイトに視覚に障がいを持たれている方向けの機能を付けたとしましょう。
同ガイドブックの例として挙げられているものが「文字サイズボタン」や「カラーテーマ変更ボタン」となります。
これらの機能をWebサイトに設置することに対して、同ガイドラインは「機能自体は有用な場合もありますが、実際に文字を大きくしてサイトを閲覧する必要があるユーザーや、色を変更してサイトを閲覧するユーザーは、特定のサイトだけではなくすべてのサイトで同じ状態になっていることを望みます。
そのため、ユーザーが使っているパソコンやスマートフォンなど、デバイス(そのOS)が提供している設定項目を調整してカスタマイズしていることが多く、特定のサイトに付加された機能を積極的に使いたいわけではない」と指摘しています。
同様に、「音声読み上げ機能」に関しても、視覚に障がいを持たれている方は、お使いのブラウザ毎にアドオンを組み込んでおられたり、ショートカットキーでブラウザの音声読み上げ機能を利用されており、個別のサイトで音声読み上げボタンが設置されていても、そもそもそのボタンを探して使用するケースは少ないと言ったヒアリング結果を得たことがあります。
また、そもそも「音声読み上げ機能」は、スクリーンリーダーが必要とするHTMLの文書構造になっていなかったり、画像の代替テキストが読み上げを意識した内容になっていないと、正確に情報を伝達できません。
そのため、「ウェブサイトや情報システムにユーザー補助の機能を付けるよりも前に、ユーザーがそれぞれのデバイスの設定機能で変更しようとしている文字サイズや色変更に対応できるような実装や、読み上げて意味が伝わるようにコンテンツを作成すること、操作がきちんとできるように実装することを優先すべき」(同ガイドブック)ということになります。
この点についても、同ガイドブックはチェックツールの有用性を認めつつ、「チェックツールで見つけられる問題は、ウェブアクセシビリティの問題の2割から3割程度」と指摘しています。
具体例として、「チェック項目の1つに『ウェブページの言語設定』がありますが、言語が設定されていないことはチェックツールで判別できても、どの言語を選ぶのがよいかは人が確認しないとわかりません。また、画像に代替テキストが付与されていることは機械でチェックできても、それが適切なテキストかどうかは機械は判断できません。」と記載されています。
Web制作の現場におりますと、いずれはAIが「どの言語を選ぶのがよいか」や「代替テキストが適切かどうか」なども判断してくれるようになると想像しています。
しかし、まだそれらは十分な形では実現されてはいません。
そのため、「ウェブアクセシビリティは基本的に『人がチェックする必要がある』」(同ガイドブック)ということになります。具体的には、何かのユーザー補助ツールを導入すればよいというものではなく、代替テキストを考えながら入れる等、企業の担当者と私たちベンダーが考えながらチェックしていく必要があります。
それでは、企業としては、ウェブアクセシビリティをどのレベルで提供せねばならないのでしょうか。
実は、本記事を改訂している2024年11月においても、その内容は明確ではありません(ここで「明確でない」というのは、例えば、「Webサイトの全ページ中、重要なページを含む90%以上が、JIS X 8341-3規格のAA基準をクリアしている状態とすること」というような形式的基準が法律、政令等で設けられていないということを意味しています)。
とはいえ、ウェブアクセシビリティにおける達成すべき程度については、上記デジタル庁のガイドブックでは「必ず達成しなければならないもの(重大)」「基本的に達成すべきこと(必須)」「状況に応じて確認すべきこと(個別対応)」を明示しています。
そのため、企業としては、これらの項目に該当する点については達成を目指していくべきであると当社では考えております。
なお、同ガイドブックには「よく検討して導入すべきこと(非推奨)」の項目がありますので、その項目に配当することを実装する場合には慎重に検討する必要があると考えます。
同ガイドブックでは、「これだけは必ず達成する必要がある達成基準」のことを、「利用者がウェブページの他の部分へアクセスすることを妨げていない」状態であるということから「非干渉」という言葉を使っており、「非干渉」の達成基準として次の4項目を挙げています。
・読み上げはひとつまで。自動再生はさせない
・袋小路に陥らせない
・光の点滅は危険
・自動でコンテンツを切り変えない
同ガイドブックでは、「非干渉」ほどではないが、達成していないとコンテンツが十分に伝わらない、あるいは操作が不完全にしかできない達成基準として、次の13項目を挙げています。
・ロゴ・写真・イラストなどの画像が指し示している情報を代替テキストとして付与する
・キーボード操作だけで、サービスのすべての機能にアクセスすることができるようにする
・操作に制限時間を設けてはいけない
・赤字・太字・下線・拡大のみによる一部強調などを用いてはいけない
・スクリーンリーダーで順に読み上げたときに、意味が通じる順序になっている
・見出し要素だけで、セクションやブロックに含まれる要素を表現する
・文字と背景の間に十分なコントラスト比を保つ
・テキストの拡大縮小をしても情報が読み取れる
・特殊なテキストや表現を使わない
・ページの内容を示すタイトルを適切に表現する
・リンクを適切に表現する
・ナビゲーションに一貫性をもたせる
・同じ機能には、同じラベルや説明をつける
同ガイドブックでは、サイトや情報システムによっては無いこともあるコンテンツや確認事項として、次の4項目を挙げています。
・入力フォームを様々な使い方でも使えるようにする
・音声・映像コンテンツに代替コンテンツを付与する
・動的コンテンツをユーザーが操作できるようにする
・コンテンツの変化がスクリーンリーダーにも分かるようにする
同ガイドブックでは、使い方や使う場所によって、アクセシビリティを向上できなかったり、逆にアクセシビリティを損ねる技術や実装方法として、次の2項目を挙げています。
・アクセシビリティ・オーバーレイなどのプラグインの利用は非推奨
・文字サイズの変更、読み上げプラグインの利用は非推奨
上記のように、デジタル庁のガイドブックは非常に参考になりますが、一方で、当社のクライアントである上場企業様では、ウェブアクセシビリティに関する国際的な規格であるWCAG 2.2におけるAA基準に準拠することや、このWCAG規格をベースとした国内規格であるJIS X 8341-3:2016(WCAG 2.0と一致する規格)におけるAA基準に準拠することを社内ルールとして策定されているところが多い状況です。
そこで、WCAG 2.2におけるAA基準を下記にまとめておきます。
また、各達成基準の詳細については、別コラム「WCAG 2.2 AA基準に準拠したWebサイトの制作・改善方法」該当箇所へのリンクを掲載しておきます。
前述のように、ウェブアクセシビリティへの対応は、法的義務化された合理的配慮の提供義務に影響を与えることから、特にコンプライアンスに厳しい上場企業グループ様において、対応が進み始めています。
しかしながら、WCAG 2.2におけるAA基準を理解し、そのチェックを行えるWeb制作会社はまだまだ少ない状況かと思います。
WCAG 2.2におけるAA基準に対応したWebサイト制作や、保守管理業務のなかでのウェブアクセシビリティ対応に関しては、こちらのお問合せよりお気軽にご相談ください。
当社は、2023年12月よりWeb幹事に登録をし、Web幹事さんからご紹介いただいているコンペに参戦してまいりました。
そのうえで、1万5千社登録されているWeb幹事登録制作会社のうち、2023年1月~2024年6月の期間で登録した制作会社のなかではベスト(新人賞)という評価をいただきました。
WCAG 2.2におけるAA基準に対応するWeb制作が可能です。
新人賞の受賞、誠におめでとうございます。
デザイン力はもちろん、セキュリティー面も考慮したホームページ制作は短期間で多くのお客様を魅了し続けています。
また、ホームページが快適に使える高速化の技術、テクニカルSEOの対策技術にも長けており、お客様より高い信頼を勝ち得ています。
taneCREATIVE社は、「リモートによるWebアプリケーションのセキュリティ対策をパッケージ化、首都圏大手企業に提供」している点が評価され、2021年にJ-Startup NIIGATAに選定されているWeb制作会社であり、保守・管理業務の一環として既存サイトのウェブアクセシビリティ対応も実施しております。
※「J-Startup NIIGATA」とは、経済産業省が2018年に開始したJ-Startupプログラムの地域版として、新潟発のロールモデルとなるスタートアップ企業群を明らかにし、官民連携により集中的に支援する仕組みを構築することで、新潟県におけるスタートアップ・エコシステムを強化する取組です。
taneCREATIVEに所属する謎のトラ。
2025年1月8日改訂
2024年11月13日改訂
2024年7月29日執筆