Web系ベンチャー企業が佐渡島へ集結し始めている理由

本記事は「WEBプロダクション年鑑(2020)創刊20年記念号」に特集として掲載されたものであり、出版元である株式会社アルファ企画様の承諾を頂いてコラムとして公開しているものになります。

 

佐渡島とWeb系ベンチャー企業?

Web系ないしITを利活用したベンチャー企業が、佐渡島に続々と創業ないしサテライトオフィスを設置し始めていることをご存知でしょうか。
実は佐渡島は近年「起業の島」として行政・Web系の業界から注目され始めており、後述する「NEXT佐渡」による創業・誘致支援を経た企業だけをカウントしても、2015年冬からの4年弱で7社のベンチャー企業が佐渡島に創業ないしサテライトオフィスを展開し、2019年9月現時点ではその全てが一定の成功を収めていると言われています。
7社の内2社は東証への上場を目指しており、別の1社は創業3年目にして東証1部上場企業へのバイアウトが成立した、と聞けば読者の皆様も理由を知りたいと思われるのではないでしょうか。
本特集記事では、起業を志す方や既に首都圏などでWeb系の会社を起業されている方向けに、佐渡島での起業・サテライトオフィスの設置がなぜ成功しやすいかについて、そのポイントお伝えしたいと思います。

佐渡島にてベンチャー企業が 成功し易い理由

佐渡島での創業ないしサテライトオフィスの展開が成功し易い理由は概ね次の5点+αが挙げられます。

1. 佐渡島を舞台とした多様なストーリー
2. 人材雇用コストの安さと離職率の低さ
3.  圧倒的に有利な補助金・助成金コンボ
4.  創業・企業誘致支援プログラム「NEXT佐渡」
5. 続々と整備され続ける各種インフラ・受け入れ体制
+α.佐渡島版コネクターハブとして期待されるtaneCREATIVE株式会社

佐渡島を舞台とした多様なストーリー

佐渡島は新潟市から高速船で約1時間の距離にある、日本では沖縄本島に次ぐ面積を持つ離島で、2019年9月時点で5万4千500人ほどが住んでいます。
暖流と寒流の接点にあるため、植生が極めて富んでおり、北海道や沖縄地方特有の植物が同居する非常に珍しい植生地域であるとともに、多様な水産物にも恵まれているため、自然と食に恵まれた豊かな島です。
こういった恵まれた環境をベースにシーカヤック、ダイビング、トレッキングなどでも多くの人を惹きつける魅力が多い島ですが、佐渡国際トライアスロン大会や、スポニチ佐渡ロングライド210が開かれるなど、スポーツの島としても知られています。
また、かつてはいわゆる政治犯の流罪地であったことや、江戸時代から佐渡金山によって天領として繁栄し、更には西廻り航路の寄港地として栄えたことで、貴族文化、武家文化、町人文化が一体となった佐渡島特有の文化が形成され、今日までも多くの伝統芸能が島民によって受け継がれています。
地元に関わろうと思えば田舎特有の人のぬくもりを感じられますが、一定の規模を有している島であることから関りを求めなければ干渉もほぼありません。
こうした佐渡島の多様な魅力は、これまでは何か一つに特化した観光地と比較して「分かりにくい」というブランディング上のデメリットがありました。
しかしながら、この日本の縮図ともいうべき多様性こそが、それぞれの個性を有するIT系のスタッフが求めるワークライフバランスを実現する場所として脚光を浴び始めています。
「どこで」「誰と」「何をするのか」を重視するベンチャー企業の関係者にとって、佐渡島を舞台とする、企業の、あるいはスタッフそれぞれの多様なストーリーこそが、佐渡島での創業ないしサテライトオフィスの展開が成功し易い1つ目の理由です。

人材雇用コストの安さと 離職率の低さ

前述のように佐渡島には5万4千人を超える人口があり、そのうち労働力人口は3万人ほどいます(平成27年国勢調査 産業等基本集計の概要より)。
特に若い女性による短時間のデスクワークに関するニーズは非常に強く、その結果、首都圏にて優秀な人材を得ようと思えばもはや必須といって良い人材紹介サービスを利用せずとも、ハローワークに募集を掲出するだけで良い人材が得られます。
前述の7社もハローワーク経由で良い人材が得られることに驚き、当初の採用予定より多めに採用している事実があります。
また、佐渡島は離島であるが故に、新潟市まで毎日働きに出ることは難しい地理的な特徴を有しています。このため、一度良い職場に恵まれると、可能な限り長く勤めてくれることから離職率が低い傾向にあります。
更に、佐渡市では2017年より佐渡市奨学金制度を定め、島内の高校生が大学・専門学校等に進学する際に学費相当額を貸与し、卒業後10年以内に佐渡島へ戻り、5年以上定住した場合には全額返済免除するという高度人材のUターン促進制度を設けました。この制度が効果を発揮し始める近い将来より、IT系の高度なスキルを有する若者が佐渡島へと戻ってくることが予想されています。
すなわち、雇用自体にかかるコストがほぼゼロになる上に、離職率が低いためにナレッジが社内に蓄積され、離職に伴う教育コストも低減する上に、未来に向けて高度なIT人材を雇用できる体制整備も進んでいることが、佐渡島での創業ないしサテライトオフィスの展開が成功し易い2つ目の理由であると言えます。

圧倒的に有利な 補助金・助成金コンボ

ここからの情報は特に重要な情報になります。

まず、圧倒的な補助金として、2017年より10年間利用可能な有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法に基づく「佐渡市雇用機会拡充事業補助金」があります。
これは佐渡市内で創業・事業拡大をする場合の設備費、改修費、広告宣伝費、店舗等借入費、人件費、研究開発費の3/4を最大5年間補助されるというものです(※毎年審査があります)。

創業の場合は年間補助額450万円/事業額600万円、事業拡大の場合は年間補助額900万円/事業額1200万円(※設備投資を行う場合1年だけ年間補助額1200万円/事業額1600万円)という補助額もかなりのものですが、設備費、人件費や広告宣伝費など、Web系の事業を行う際に必要となるほとんどの事業に利用できる点でも使いやすい補助金です。

次に、佐渡市特有の補助金として、佐渡市キャリアアップ支援事業補助金が挙げられます。
これは国のキャリアアップ助成金(有期雇用を無期ないし正規雇用等に転換した場合 1人毎に最大57万円を給付)に上乗せして、1人ごとに90万円(30万円ずつ3年間)補助金を交付するという佐渡島特有の補助金になります。

分かり易い例として、「佐渡市雇用機会拡充事業補助金」に採択されてから、佐渡市にサテライトオフィスを設置して、1人年間200万円のコストで6人を有期で3年間雇用したとしましょう。その間にお互いに続けられそうだということになり、6人を正社員に転換したケースを想定します。この場合、何もなければ人件費として200万円×6人×3年間=3600万円がかかる計算になります。

ところが、佐渡市雇用機会拡充事業補助金+キャリアアップ助成金+佐渡市キャリアアップ支援事業補助金をコンボで使用すると、(200万円の3/4補助で150万円×6人×3年間)+(57万円×6人=342万円)+(90万円×6人=540万円)=3582万円が補助ないし助成される為、ほぼ人件費ゼロに近い状態で6名を3年間雇えることになるのです。

※なお、これらに加えて、2019年より新設された国の人材確保等支援助成金に新たに働き方改革支援コースの併給を受けることができると言われておりますが、詳細は関係各所にお問合せ下さい。
資金力に乏しいベンチャー企業はこれを実施するだけで起業の成功率は大幅に増えますし、サテライトオフィスの設置先としての魅力は一気に上昇するといえるでしょう。佐渡島での創業ないしサテライトオフィスの展開が成功し易い3つ目の理由です。

創業・企業誘致支援チーム 「NEXT佐渡」

創業・企業誘致支援チーム「NEXT佐渡」は、2015年冬に設立された団体で、佐渡島の若手経営者が中心となりつつも各専門家、国会議員、新潟県、佐渡市、銀行、市議会議員等がそれぞれの立場・関わり方にて参加をしており、創業者に対してはメンターがついて各種アドバイス・支援を、企業誘致のケースではあまり出しゃばらず必要とされる支援を、出来る範囲で、しかしながら護送船団のように手厚く行っています。
上記の7社もNEXT佐渡を経由して創業ないし佐渡への進出をしており、現在年3回(4月、8月、12月)開催されているNEXT佐渡の会議にて創業ないし事業拡大のプレゼンをしていただくと、一気に佐渡島での創業・サテライトオフィス設立が加速するでしょう。
このNEXT佐渡が想定以上にポジティブな効果を発揮していることから、2019年よりNEXT佐渡事務局であるtaneCREATIVE株式会社が、新潟県のスタートアップ支援拠点に認定された他、佐渡市の企業誘致コーディネーターに認定されることになりました。
これにより、特に首都圏の起業相談者、地方へのサテライトオフィスを検討されている企業への第一次的ご相談対応は、佐渡島までお越しいただくことなく、東京にてtaneCREATIVE株式会社が正式に担当できることとなります。
護送船団への水先案内人として更なる成果が期待されています。
このNEXT佐渡という仕組みこそが、佐渡島での創業ないしサテライトオフィスの展開が成功し易い4つ目の理由と言えるでしょう。

「NEXT佐渡」のスキーム図

続々と整備され続ける 各種インフラ・受け入れ体制

意外に思われるかもしれませんが、佐渡島への交通は整備されており、両津港にて朝7:20の高速船に乗れば、10:40には東京駅には到着するため、首都圏でのビジネスの展開に関しては距離面でのマイナス面はそれほどありません。
また、よく地方自治体がWeb系の企業を誘致する
際に伝えてくる光ファイバーによる高速ネット回線については、当然ながら佐渡島にも敷設されており(一部外周部についてはケーブルテレビ網にて補完されています)、実際にNEXT佐渡経由で佐渡島へと進出した企業はクラウドシステムやWeb会議によって東京とリアルタイムでやり取りをしながら業務を実施しています。
佐渡市地域振興課は前述のNEXT佐渡と連携し、佐渡島にて起業を検討している人や、佐渡島にてサテライトオフィスを探す企業に対して、例えば空き家を探す、解決策を有していそうな人と繋ぐなどの下支えをする体制を整備している他、短期間の格安お試し住宅・お試しオフィスも保有しており、適宜支援する体制を整えています。
民間でも歴史ある旅館の本館をオフィスに改装した植田屋がインキュベーションセンターとしての機能を有しており、現在taneCREATIVE株式会社をはじめとして4社が入居しています。 このインキュベーションセンターについては更に歴史とストーリーのある建物にて第二弾も検討されており、更なる受け入れ態勢の整備が検討されています。
このように官民一体となった受け入れ態勢を整備し続けている地方は、案外少ないのではないでしょうか。 佐渡島では、ただ行政に声高に要求をしたり批判をしたりするよりも、官民がそれぞれの役割を意識しながら、互いに尊重し合って実効的な創業支援・企業誘致支援を出来るように取り組み始めており、この点が佐渡島での創業ないしサテライトオフィスの展開が成功し易い5つ目の理由であると考えています。

コネクターハブとして期待される taneCREATIVE株式会社

最後に、2012年に佐渡島で創業されたWeb制作会社であるtaneCREATIVE株式会社が、佐渡島版コネクターハブとしての機能を有し始めている点が挙げられます。
「コネクターハブ企業」とは、本来は地域の中で取引が集中しており、地域外とも取引を行っている企業の内、特に地域経済への貢献が高い企業を指すとされています。
taneCREATIVE株式会社は2019年9月現在24名(役員、パート含む)のWeb制作会社ですが、創業8年目にして既に多くの上場企業、金融機関などを顧客としており、一定の規模のWeb制作は数ヵ月の予約待ちという状態になっています。そしてそれらの仕事や新しいチャレンジを一緒にしてくれるいくつかのWeb系ベンチャー企業やグラフィック会社が佐渡島で起業ないし佐渡島でのサテライトオフィス設置を実施してきました。先ほどのNEXT佐渡を経由した7社も多かれ少なかれ全てtaneCREATIVE株式会社との縁で立ち上がったり、佐渡島へと進出を決めた企業になります。
また、こういった経緯から、taneCREATIVE株式会社には、仕事を首都圏から持ってきて島内に分配するといった従来の意味のコネクターハブとしての役割の他に、前述のように特に首都圏のベンチャー企業と佐渡島を繋げるという意味でのコネクターハブ機能が期待されるようになってきました。佐渡版のコネクターハブ企業と言えるかもしれません。
特にtaneCREATIVE株式会社との仕事のシェアをし易い、あるいは一緒に新しいことにチャレンジし易いWeb系ベンチャー企業やグラフィック会社を創業、経営されている経営者の方には、是非ともtaneCREATIVE株式会社へとご相談いただき、佐渡島での創業、佐渡島へのサテライトオフィス展開をご検討頂きたいと思います。

佐渡島での創業、サテライトオフィス設置のご相談先


taneCREATIVE株式会社
NEXT佐渡 事務局 / 新潟県「スタートアップ支援拠点」 / 佐渡市「企業誘致コーディネーター」

新潟県佐渡市中興乙1427
tel. 0259-67-7572 / Fax. 0259-67-7574
創業支援・企業誘致支援担当: 榎