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皆さんこんにちは。
taneCREATIVEの「ちほうタイガー」です。
この記事は、MariaDBのバージョン情報とサポート期限についてまとめたもので、2025年5月14日に改訂しています。
MariaDBはオラクル社がサポートをしているオープンソースのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)であるMySQL Community Editionのフォーク(既存のソフトウェアをコピーして変更を加えた独自のバージョン)です。
MariaDBは、MySQLのソースコードをベースにしていることから、多くのMySQLに対応したアプリケーションがMariaDB上でも動作します。
一方で、バージョンが進むにつれて独自の機能や最適化が追加で実装され、現在ではMySQLと異なる機能も増えてきています。
この記事では最新のMariaDBのバージョン情報やコミュニティが提供するサポート内容とサポート期限などをご確認頂けます。
少しでも皆様のお役に立てる記事にできればと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
MariaDBの無料版には正式なエディション名はないと認識していますが、一般的には「MySQL Community Edition」に相当するエディションとして「MariaDB Community Server」と呼ばれています。
このMariaDB Community Serverには、MySQL Community Editionの各製品に対応する製品が含まれています。
MariaDBには、この他に有料版の製品・サービスとして、「MariaDB Enterprise Server」等があります。
MariaDB | 無料エディション | MariaDB Community Server ※本記事で取り扱うMariaDB |
有料エディション | MariaDB Enterprise Server |
とはいえ、Web制作の現場では、基本的にはMariaDB Community Serverを利用されているケースがほとんどだと思いますので、本記事で「MariaDB」と記載している場合、特別な記載がない限りMariaDB Community Serverの製品を指しているものとします。
本記事のはじめにMariaDBとして説明をしてきた製品は、実はMariaDB Serverのことを指しています。
WordPressをはじめとするMySQLを採用しているCMSのデータベースに関する標準設定ではシングルサーバーの環境で運用されることが一般的であることから、Web制作・保守管理の現場では、MariaDB=MariaDB Serverの意味で使用されていたりします。
一方で、MySQL Clusterに近い(が異なるアプローチである)MariaDB Galera Clusterは、データの高可用性とスケーラビリティを実現するための分散型のデータベースシステムです。
ユーザーは、Webシステムの要件に応じてMariaDB ServerまたはMariaDB Galera Clusterを選択することになります。
Web制作の現場で、MariaDB Galera Clusterを採用することは稀ですが、無いとも言い切れないのが面倒なところです。
非常に大規模場なWebサイトや、アクセス数が膨大なWebサイトでは、大量のデータベースクエリを処理する必要があるため、MariaDB Galera Clusterを採用しているケースがありうるためです。
とはいえ、基本的にはMariaDB Serverを利用されているケースがほとんどだと思いますので、本記事で「MariaDB」と記載している場合、特別な記載がない限りMariaDB Serverを指しているものとします。
MariaDB Community Server | MariaDB Server | シングルサーバーの環境で運用 ※本記事で取り扱うMySQL |
MariaDB Galera Cluster | 複数サーバーで構成 |
MariaDB Serverのバージョンは、安定したサポートを目指すLTS版(Long-Term Support、長期サポート)と、新機能を積極的に導入するrolling版(短期サポート)の二本立てとなっています。
とはいえ、統一したバージョン管理がされていますので複雑に考える必要はありません。
バージョン11.4、10.11、10.6、10.5がLTS版、それ以外の各マイナーバージョンがrolling版となります。
※例えば、11.4、11.8がLTS版であるため、11.1~11.3、11.5~11.7がrolling版となります。
※MariaDB 10.5については、2020年リリース当初は公式に「LTS」と明言されていませんでした。しかし結果的に2025年6月まで保守されることとなったため、実質的にはLTSにあたるものと区分しています。
Webサイト制作・保守の現場では、ほぼ安定しているLTS版をご利用になられていると思いますので、本記事では「MariaDB」とのみ記載している場合、特別な記載がない限りMariaDB ServerのLTS版を指しているものとします。
MariaDB Server | LTS版 | 安定したサポートを目指す長期サポートバージョン ※本記事で取り扱うMariaDB |
Rolling版 | 新機能を積極的に導入するバージョン |
2025年5月14日現在、MariaDB(LTS版)の最新バージョンは11.4です。
※MariaDB 11.8が2025年5月に新たなLTSとして一般公開(GA)される予定ですが、改訂時点ではまだリリースされていません。
MariaDBの公式がセキュリティサポートをしているLTS版のバージョンは、11.4、10.11、10.6、10.5の4系統のみです。
MariaDBのバージョン10.5は2025年6月24日に無償のセキュリティサポートが終了しますのでご注意ください。
MariaDBでは、MariaDB 11.4まで無料エディションであるMariaDB Community ServerのMariaDB Server LTS版であっても、リリース日より5年間はサポートを受けることができました(正確にはリリース日より3年間はセキュリティパッチと不具合の修正の他に新機能の追加が提供されますが、その後の2年間はセキュリティパッチと致命的な不具合への対応のみとされていました)。
しかしながら、2025年以降は、2025年より年1回のLTS版リリースに移行し、それに合わせてLTS版リリースのフルサポート期間は3年に短縮されることとなりました。とはいえ、重要なセキュリティ修正はその後2年間ベストエフォート(最大限の努力)で提供されるとのことですので、結果的にはセキュリティ対応は最大5年近くカバーされるものと考えられます。
これらのサポート(不具合の発見、報告、コードの提供)はコミュニティによって行われますが、アップデートはMariaDB CorporationおよびMariaDB Foundationによって管理されており、無償版とはいえ公式のサポートを受けることができます。
MariaDBの有料エディションであるMariaDB Enterprise ServerのMariaDB Server LTS版に関しては、2025年以降もリリース日より5年間はサポートを受けることができます。
無料版と異なる点は、エンタープライズ向けの新機能の追加もあること、カスタムサポートがあること、有償の延長サポート(3年間)を受けることができる場合があることです。
ただし、この延長サポートの費用については、固定の価格表は公表されておらず(少なくとも当社は見つけられておらず)、企業の規模、サーバー数、サポートが必要なMariaDBインスタンスの数、具体的なサポート内容によって異なってくるようです。
MariaDB Server LTS版のリリース日とサポート期限について下記にまとめてみました。
これは無償版でも有償版でも同様です。
MariaDB 10.5については、サポート終了日が近づいていますので対応策の検討が必要かと思います。
MariaDBのバージョン | GAリリース日 | 無償版サポート終了日 | 有償版サポート終了日 |
11.4 | 2024年5月29日 | 2029年5月29日 | 2032年1月16日 |
10.11 | 2023年2月16日 | 2028年2月16日 | 2028年2月16日 |
10.6 | 2021年7月6日 | 2026年7月6日 | 2027年8月23日 |
10.5 | 2020年6月24日 | 2025年6月24日 | 2025年6月16日 |
10.3 | 2018年5月25日 | 2023年5月25日 | 2023年5月25日 |
10.1 | 2015年10月17日 | 2020年10月17日 | 2020年10月17日 |
5.5 | 2012年4月11日 | 2020年4月11日 | 2020年4月11日 |
※グレーのバージョンは公式のセキュリティサポートが終了しています。
※上記表はLTS版のバージョンだけを抜きだしたものです。
※5.4以前はLTSとRollingの区別はありませんでしたが、いずれにしてもサポートは終了しています。
MariaDBのサポート終了への対応策としては、概ね次の4パターンが考えられます。
MariaDB有料版を契約されている場合、延長サポートを追加で購入することで、追加サポートを受けることが可能であるようです。
曖昧な記載になっているのは、当社として延長サポートを実施した経験がないからになります。
ただ、調べた限りでは、固定の価格表が存在せずMariaDB Corporationとの契約交渉が必要な模様です。
MariaDBの公式窓口または販売代理店を通じて見積もりを依頼してみるという形になるでしょう。
ご契約いただいているベンダーさんに費用についてお問い合わせいただき、ご検討ください。
Web制作会社である当社に、MariaDBからデータベースソフトウェアを変更したいというご相談をいいただくと、まず最初に思い浮かぶ候補がMySQLです。
Web制作に関する技術選択でLAMPと言われる王道の組み合わせがありますが、このうち「L」はLinux、「A」はApache、「P」はPHPであることに異論はありません。
しかしながら、「M」については、オラクル社のMySQLか、コミュニティで開発されたMariaDBのどちらかを指すという程、MySQLも人気を有するRDBMSです。
MariaDBはMySQLのフォークですので、MariaDB用に作成されたアプリケーションとスクリプトは大きな変更を加えなくてもMySQLで動作する可能性があります。
しかしながら、MariaDBはMySQLと優れた互換性を有しているものの、最新バージョンに近づくほど独自の機能拡張を行っており、移行時には注意も必要です。
順調に移行できないケースもありえますので、思いのほかコストがかかる可能性があります。
また、MySQLにも結局はサポート期間という問題があります。
基本的には、MySQLよりMariaDBの方がサポート期間が長い傾向にありますので、MariaDBからMySQLに変更するのは、サポート期間という意味では選択しにくいかと思います。
MariaDBのバージョンアップを実施するという方法が、最も一般的な対処方法になります。
しかしながら、データベースソフトウェアのバージョンアップ、特にメジャーバージョンアップの場合(例えば5.5から11.4へのバージョンアップ等)には、かなりの確率でアプリケーション側にエラーが発生します。
そのため、以下の手順で慎重にバージョンアップをする必要があります。
① 旧バージョンと新バージョンの変更点の事前把握
② 影響範囲の確定
③ ステージング環境ないしディべロップ環境でのバージョンアップ実施
④ ステージング環境ないしディべロップ環境でのエラーの発見と解消及び手順書の作成
⑤ エラーが解消されたことを確認した後、本番環境での手順書に従いながらバージョンアップとエラーの解消を実施
⑥ 本番環境でのテスト
Web制作の現場で多いのが、5年程度経過したWebサイトはデザインごとリニューアルしてしまうという手法です。
この場合、そもそも最新のMariaDBバージョンで作り直しますので、問題も解決します。
MariaDBは基本的に無償のオープンソースであり、Webサイトに関しては特にWordPressサイトで選択されることが増えてきました。
しかしながら、自社内で保守を行うにも属人化が発生してリソースが足りなくなったり、徐々にシステムの規模が大きくなるにつれて社内では対応できなくなったりすることが増えています。
そうした場合、特にWebサイトに関してはWeb制作会社に相談されると思いますが、MariaDBを含むミドルウェアのアップデートには対応できないと回答されるケースもあるようです。
無料版であるMariaDBで保守を継続したい等のお悩みがございましたら、こちらのお問合せよりお気軽にご相談ください。
taneCREATIVEに所属する謎のトラ。
2025年5月14日改訂
2024年8月21日執筆