【2024年8月版】MariaDBのバージョン情報とサポート期限

皆さんこんにちは。taneCREATIVEの「ちほうタイガー」です。
この記事は2024年8月21日に本記事を執筆しています。

最近、WordPressサイトの保守のご相談を受ける際に、MariaDBを利用されているケースが増えてきました。
しかしながら、MariaDBのサポート内容やサポート期限についてまとまっているWebサイトが少ない印象です。
そこで、今回は、企業のWeb担当者である皆様に向けて、MariaDBの各バージョンにおけるサポート内容とサポート期限についてまとめてみたいと思います。

MariaDBはオラクル社がサポートをしているオープンソースのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)であるMySQL Community Editionのフォーク(既存のソフトウェアをコピーして変更を加えた独自のバージョン)です。

MariaDBは、MySQLのソースコードをベースにしていることから、多くのMySQLに対応したアプリケーションがMariaDB上でも動作します。
一方で、バージョンが進むにつれて独自の機能や最適化が追加で実装され、現在ではMySQLと異なる機能も増えてきています

この記事では最新のMariaDBのバージョン情報やコミュニティが提供するサポート内容とサポート期限などをご確認頂けます。

少しでも皆様のお役に立てる記事にできればと思います。どうぞよろしくお願い致します。

MariaDBのエディションと言葉の定義について

MariaDBには無料版と有料版があります

MariaDBの無料版には正式なエディション名はないと認識していますが、一般的には「MySQL Community Edition」に相当するエディションとして「MariaDB Community Server」と呼ばれています。
このMariaDB Community Serverには、MySQL Community Editionの各製品に対応する製品が含まれています。

MariaDBには、この他に有料版の製品、サービスとして、「MariaDB Enterprise Server」等があります。

とはいえ、Web制作の現場では、基本的にはMariaDB Community Serverを利用されているケースがほとんどだと思いますので、本記事で「MariaDB」と記載している場合、特別な記載がない限りMariaDB Community Serverの製品を指しているものとします。

MariaDB 無料エディション MariaDB Community Server
※本記事で取り扱うMariaDB
有料エディション MariaDB Enterprise Server

MariaDB Community Server、MariaDB Enterprise ServerにはMariaDB Serverという製品が含まれています

本記事のはじめにMariaDBとして説明をしてきた製品は、実はMariaDB Serverのことを指しています。
WordPressをはじめとするMySQLを採用しているCMSのデータベースに関する標準設定ではシングルサーバーの環境で運用されることが一般的であることから、Web制作・保守管理の現場では、MariaDB=MariaDB Serverの意味で使用されていたりします。

一方で、MySQL Clusterに近い(が異なるアプローチである)MariaDB Galera Clusterは、データの高可用性とスケーラビリティを実現するための分散型のデータベースシステムです。
ユーザーは、Webシステムの要件に応じてMariaDB ServerまたはMariaDB Galera Clusterを選択することになります。

Web制作の現場で、MariaDB Galera Clusterを採用することは稀ですが、無いとも言い切れないのが面倒なところです。
非常に大規模場なWebサイトや、アクセス数が膨大なWebサイトでは、大量のデータベースクエリを処理する必要があるため、MariaDB Galera Clusterを採用しているケースがありうるためです。

とはいえ、基本的にはMariaDB Serverを利用されているケースがほとんどだと思いますので、本記事で「MariaDB」と記載している場合、特別な記載がない限りMariaDB Serverを指しているものとします。

MariaDB Community Server MariaDB Server シングルサーバーの環境で運用
※本記事で取り扱うMariaDB
MariaDB Galera Cluster 複数サーバーで構成

MariaDB ServerにはLTS版とSTS版の2種類があります

MariaDB Seaverのバージョンは、安定したサポートを目指すLTS(Long-Term Support、長期サポート)版と、新機能を積極的に導入するSTS(Short-Term Support)版の二本立てとなっています。

とはいえ、統一したバージョン管理がされていますので複雑に考える必要はありません。
バージョン11.4、10.11、10.6、10.5がLTS、バージョン11.5、11.2がSTS版となります。

Webサイト制作・保守の現場では、ほぼ安定しているLTS版をご利用になられていると思いますので、本記事では「MariaDB」とのみ記載している場合、特別な記載がない限りMariaDB ServerのLTS版を指しているものとします。

MariaDB Seaver LTS版 安定したサポートを目指す長期サポートバージョン
※本記事で取り扱うMariaDB
STS版 新機能を積極的に導入するバージョン

MariaDBのバージョン情報概要

MariaDBの最新バージョンは11.4です。

2024年8月現在、MariaDBの公式がセキュリティサポートをしているバージョンは、11.4、10.11、10.6、10.5の4系統のみです。

MariaDBのバージョン10.5は2025年6月24日に無償のセキュリティサポートが終了します。

MariaDBのサポート内容とサポート期限

MariaDB無料版(MariaDB Community Server)に関するサポートの内容

MariaDBでは、無料エディションであるMariaDB Community ServerのMariaDB Seaver LTS版であっても、リリース日より5年間はサポートを受けることができます(正確にはリリース日より3年間はセキュリティパッチと不具合の修正の他に新機能の追加が提供されますが、その後の2年間はセキュリティパッチと致命的な不具合への対応のみとされています)。

これらのサポート(不具合の発見、報告、コードの提供)はコミュニティによって行われますが、アップデートはMariaDB CorporationおよびMariaDB Foundationによって管理されており、無償版とはいえ公式のサポートを受けることができます。

MariaDB有料版(MariaDB Enterprise Server)に関するサポートの内容

MariaDの有料エディションであるMariaDB Enterprise ServerのMariaDB Seaver LTS版に関しても、当然ながらリリース日より5年間はサポートを受けることができます。
無料版と異なる点は、エンタープライズ向けの新機能の追加もあること、カスタムサポートがあること、有償の延長サポートを受けることができる場合があることです。
ただし、この延長サポートの費用については、固定の価格表は公表されておらず(少なくとも当社は見つけられておらず)、企業の規模、サーバー数、サポートが必要なMariaDBインスタンスの数、具体的なサポート内容によって異なってくるようです。

MariaDBのバージョンとサポート期限

MariaDB Seaver LTS版のリリース日とサポート期限について下記にまとめてみました。
これは無償版でも有償版でも同様です。

MariaDB 10.5はまだしばらく問題なさそうですが、サポート終了日が近づいていますので対応策の検討が必要かと思います。

MariaDBのバージョン リリース日 サポート終了日
11.4 2024年5月29日 2029年5月29日
10.11 2023年2月16日 2028年2月16日
10.6 2021年7月6日 2026年7月6日
10.5 2020年6月24日 2025年6月24日
10.3 2018年5月25日 2023年5月25日
10.1 2015年10月17日 2020年10月17日
5.5 2012年4月11日 2020年4月11日

※グレーのバージョンは公式のセキュリティサポートが終了しています。
※上記表はLTS版のバージョンだけを抜きだしたものです。
※5.4以前はLTSとSTSの区別はありませんでしたが、いずれにしてもサポートは終了しています。

MariaDBのサポート終了への対応策

MariaDBのサポート終了への対応策としては、概ね次の4パターンが考えられます。

MariaDBの延長サポートを購入する

MariaDB有料版を契約されている場合、延長サポートを追加で購入することで、追加サポートを受けることが可能のようです。
曖昧な記載になっているのは、当社として延長サポートを実施した経験がないからになります。
ただ、調べた限りでは、固定の価格表が存在せずMariaDB Corporationとの契約交渉が必要であるようです。
MariaDBの公式窓口を通じて見積もりを依頼してみるという形になるでしょう。
ご契約いただいているベンダーさんに費用についてお問い合わせいただき、ご検討ください。

MariaDB以外のデータベースに変更する

Web制作会社である当社に、MariaDBからデータベースソフトウェアを変更したいというご相談をいいただくと、まず最初に思い浮かぶ候補がMySQLです。

Web制作に関する技術選択でLAMPと言われる王道の組み合わせがありますが、このうち「L」はLinux、「A」はApache、「P」はPHPであることに異論はありません。
しかしながら、「M」については、オラクル社のMySQLか、コミュニティで開発されたMariaDBのどちらかを指すという程、MySQLも人気を有するRDBMSです。

MariaDBはMySQLのフォークですので、MariaDB用に作成されたアプリケーションとスクリプトは大きな変更を加えなくてもMySQLで動作する可能性があります。

対応するバージョンは以下の通りです。

MariaDBのバージョン MySQLのバージョン
10.4-11.x 8.0
10.2-10.4 5.7
10.0 5.6
5.5 5.5
5.1 5.1

しかしながら、MariaDBはMySQLと優れた互換性を有しているものの、最新バージョンに近づくほど独自の機能拡張を行っており、移行時には注意も必要です。
順調に移行できないケースもありえますので、思いのほかコストがかかる可能性があります。

また、MySQLにも結局はサポート期間という問題があります。

MariaDBのバージョンアップを実施する

MariaDBのバージョンアップを実施するという方法が、最も一般的な対処方法になります。
しかしながら、データベースソフトウェアのバージョンアップ、特にメジャーバージョンアップの場合(例えば5.5から11.4へのバージョンアップ等)には、かなりの確率でアプリケーション側にエラーが発生します。
そのため、以下の手順で慎重にバージョンアップをする必要があります。
① 旧バージョンと新バージョンの変更点の事前把握
② 影響範囲の確定
③ ステージング環境ないしディべロップ環境でのバージョンアップ実施
④ ステージング環境ないしディべロップ環境でのエラーの発見と解消及び手順書の作成
⑤ エラーが解消されたことを確認した後、本番環境での手順書に従いながらバージョンアップとエラーの解消を実施
⑥ 本番環境でのテスト

Webサイトをリニューアルする

Web制作の現場で多いのが、5年程度経過したWebサイトはデザインごとリニューアルしてしまうという手法です。
この場合、そもそも最新のMariaDBバージョンで作り直しますので、問題も解決します。

MariaDBの保守を継続する体制について

MariaDBは基本的に無償のオープンソースであり、Webサイトに関しては特にWordPressサイトで選択されることが増えてきました。
しかしながら、自社内で保守を行うにも属人化が発生してリソースが足りなくなったり、徐々にシステムの規模が大きくなるにつれて社内では対応できなくなったりすることが増えています。
そうした場合、特にWebサイトに関してはWeb制作会社に相談されると思いますが、MariaDBを含むミドルウェアのアップデートには対応できないと回答されるケースもあるようです。
無料版であるMariaDBで保守を継続したい等のお悩みがございましたら、こちらのお問い合わせよりお気軽にご相談ください。

この記事を書いた存在
ちほうタイガー

taneCREATIVEに所属する謎のトラ。