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皆さんこんにちは。
taneCREATIVEの「ちほうタイガー」です。
この記事は2024年11月20日に執筆しています。
今回はWP Super Cacheのバージョンと脆弱性への対応状況についてまとめてみたいと思います。
WP Super Cacheは、WordPressサイトのパフォーマンスを向上させるためのキャッシュプラグインであり、Automattic社によって開発・サポートされています。
WordPressのPlugin Directoryの統計情報によると、アクティブインストールは100万以上、総ダウンロード数5508万回以上を計測しており、人気のあるプラグインの一つと言ってよいでしょう。
一方で、人気のあるプラグインであるため、攻撃対象になりやすい側面もあります。
そこで、この記事では、企業のWeb担当の皆様に向けて、WP Super Cacheの概要並びに、脆弱性及びその対応状況をご紹介することで、WP Super Cacheを安心して使用していただけるようにしたいと思います。
少しでも皆様のお役に立てる記事にできればと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
前述の通り、WP Super Cacheは、Automattic社によって開発・サポートが継続されている、オープンソースのWordPress向けプラグインです。
このプラグインを使用することで、通常であれは動的に生成しているWordPressサイトの各ページを静的ファイルに出力することができ、これによりバックエンドの応答時間を短縮し、Webサイトの表示速度を高速化することができます。
しかしながら、実際のところ、当社のようなWeb制作会社の場合、WP Super Cacheを利用することはあまりありません。
WP Super Cacheは便利ですが、こういったキャッシュ系プラグインは、サーバーレベルでのキャッシュ(Nginxなどでのキャッシュ)と競合する恐れがあり、不具合やパフォーマンスの低下といったトラブルが発生する可能性があります。
実際のところ、サーバーレベルでのキャッシュを実装するならば、Nginxでキャッシュを生成した方が、アプリケーション(WordPress)に到達する前に処理されるため応答速度が速く、高負荷時でも安定したパフォーマンスを提供するため通常はNginxで設定します。
セキュリティ保守の観点からは、できるだけプラグインの数を増やしたくないという理由もありますし、割と多くの脆弱性が見つかっている点も使いにくい理由になります。
しかしながら、nginxだとconfigの書き換えからnginxの再起動が必要ですが、プラグインならキャッシュ時間なども管理画面から変更可能であったり、パスやwordpressの構造に応じて柔軟な設定が可能であるなど、メリットもあることも事実です。
当社がこれまでに保守を引き受けたWordPressサイトには、WP Super Cacheが使用されていたことはありますし、日本国内でもよく使用されているプラグインの一つという印象です。
キャッシュ機能 | 通常であれは動的に生成しているWordPressサイトの各ページを静的なHTMLファイルを出力し、以下のユーザーに対して生成された HTMLファイルを返送することで、バックエンドの応答時間を短縮することができます。 ・ログインしていないユーザー ・コメントを書き込んだことのないユーザー ・パスワード保護された投稿を表示していないユーザー |
前述のように、有名なプラグイン(ダウンロード数が多いプラグイン)は、攻撃のターゲットとして狙われやすいという側面があります。
当社では、WordPress自体は非常に堅牢なCMSであり、バージョンアップをしっかりと行えば大きな侵入のリスクは少ないと考えています。
実際に、WordPress本体(コア)の脆弱性の数はプラグインやテーマに比べて少なく、特に最近では緊急レベルの脆弱性報告は減少しています。
※詳細は、当社が公表しているWordPressの脆弱性情報一覧を参照してください。
一方で、膨大な数のプラグインやアドオンが存在し、それらの脆弱性を狙った攻撃が増加しています。
※「20 WordPress Statistics You Should Know in 2023」によれば、WordPressに関連する脆弱性の約90%はプラグインに、6%はテーマに、残りの4%はWordPressコアに起因しているとのことです。
特に、WP Super Cacheのようなダウンロード数の多いプラグインは、多くのユーザーに利用されているため狙われやすい傾向にあります。
そのため、当社では、脆弱性に対する対応が遅い、もしくは対応しないプラグインは、クライアントに推奨していません。
WP Super Cacheは定期的にアップデートされ、脆弱性が迅速に修正されているため、最新バージョンを使用している限り問題はないと考えております。
ただし、2022年10月3日に脆弱性が報告されている他、2021年に連続して脆弱性が見つかってることから、2020年10月以前のバージョンを使用している場合には、ご利用のバージョンに問題がないか本記事にて確認されることを推奨いたします。
公式サイトに直接的な記載は見つけることができませんでしたが、WP Super Cacheでは、一般的なセマンティックバージョニングが採用されているようです。
3つの数字の左から「メジャーバージョン.マイナーバージョン.パッチバージョン」となります。
なお、古いバージョンでは4桁目の数字がありますが、特定の修正や微細な更新を示すために4桁目を追加したものと考えられます。
2024年11月20日現在、WP Super Cacheの最新バージョンは1.12.4であり、WordPress 6.6.2までテストされています。
通常のオープンソースソフトウェアでは、公式のサポート(新機能の追加、不具合の改修、セキュリティパッチの提供)対象は最新パッチバージョンのみであることから、最新パッチバージョンへのアップデートを推奨いたします。
バージョン1.8以下には既知の脆弱性があるため、最新のパッチバージョンへのアップデートを実施してください。
2024年11月20日現在での、WP Super Cacheのバージョン情報は次の通りです。
バージョン | リリース日 | サポート期限 | 修正された脆弱性 |
1.12.4 | 2024年7月17日 | サポート中 | - |
1.12.3 | 2024年7月10日 | 2024年7月17日 | - |
1.12.2 | 2024年6月27日 | 2024年7月10日 | - |
1.12.1 | 2024年5月9日 | 2024年6月27日 | - |
1.12.0 | 2024年3月11日 | 2024年5月9日 | - |
1.11.0 | 2023年11月8日 | 2024年3月11日 | - |
1.10.0 | 2023年8月16日 | 2023年11月8日 | - |
1.9.4 | 2023年3月6日 | 2023年8月16日 | - |
1.9.3 | 2023年1月31日 | 2023年3月6日 | - |
1.9.2 | 2022年12月14日 | 2023年1月31日 | - |
1.9.1 | 2022年11月2日 | 2022年12月14日 | - |
1.9 | 2022年9月16日 | 2022年11月2日 | Wordfence |
1.8 | 2022年8月16日 | 2022年9月16日 | - |
1.7.3 | 2021年4月28日 | 2021年7月8日 | CVE-2021-24329 CVE-2021-24312 |
1.7.2 | 2021年3月15日 | 2021年4月28日 | CVE-2021-24209 |
1.4.9 | 2017年2月3日 | 2017年7月19日 | Wordfence |
1.4.5 | 2015年9月25日 | 2015年10月9日 | Wordfence Wordfence Wordfence |
1.4.3 | - | - | Wordfence |
1.3.2 | - | - | CVE-2013-2011 |
1.3.1 | - | - | CVE-2013-2008 |
1.3 | - | - | CVE-2013-2009 |
※上記の内容は、WordPress公式サイトの開発ログの情報を正として、バージョン1.8までを掲載しています。また、1.8未満のバージョンについては、下記脆弱性が修正されたバージョンを追記しています。
※バージョン1.3から1.4.3までのリリース日とサポート期限については、開発ログで日付を確認できなかったため記載していません。
※バージョン1.8以下には既知の脆弱性が存在するため、グレーにしています。
WP Super Cacheの最新バージョンは1.12.4であり、当社が把握している全ての脆弱性に修正対応済みとなっています。
また、WP Super Cache 1.8以下のバージョンをご使用の場合には、既知の脆弱性が存在している可能性がありますので、最新バージョンへとアップデートをしてください。
なお、WP Super Cache自体に関する脆弱性情報で、当社が把握しているものは次の通りです。
脆弱性情報 | 深刻度 | 影響を受けるバージョン | 修正されたバージョン |
Wordfence | CVSS v3 6.5(警告) |
WP Super Cache 1.8までのバージョン | WP Super Cache 1.9 |
CVE-2021-24329 JVNDB-2021-007622 |
CVSS v3 5.4(警告) |
WP Super Cache 1.7.2までのバージョン | WP Super Cache 1.7.3 |
CVE-2021-24312 JVNDB-2021-007729 |
CVSS v3 7.2(重要) |
WP Super Cache 1.7.2までのバージョン | WP Super Cache 1.7.3 |
CVE-2021-24209 JVNDB-2021-005496 |
CVSS v3 7.2(重要) |
WP Super Cache 1.7.1までのバージョン | WP Super Cache 1.7.2 |
Wordfence | CVSS v3 5.3(警告) |
WP Super Cache 1.4.8までのバージョン | WP Super Cache 1.4.9 |
Wordfence | CVSS v3 5.3(警告) |
WP Super Cache 1.4.4までのバージョン | WWP Super Cache 1.4.5 |
Wordfence | CVSS v3 5.4(警告) |
WP Super Cache 1.4.4までのバージョン | WP Super Cache 1.4.5 |
Wordfence | CVSS v3 8.1(重要) |
WP Super Cache 1.4.4までのバージョン | WP Super Cache 1.4.5 |
Wordfence | CVSS v3 7.2(重要) |
WP Super Cache 1.4.2までのバージョン | WP Super Cache 1.4.3 |
CVE-2013-2011 JVNDB-2013-007017 |
CVSS v3 8.8(重要) |
WP Super Cache 1.3.1バージョン | WP Super Cache 1.3.2 |
CVE-2013-2009 JVNDB-2013-007195 |
CVSS v3 8.8(重要) |
WP Super Cache 1.2バージョン | WP Super Cache 1.3 |
CVE-2013-2008 JVNDB-2013-007194 |
CVSS v3 6.1(警告) |
WP Super Cache 1.3バージョン | WP Super Cache 1.3.1 |
※脆弱性情報については、情報セキュリティにおける脆弱性情報に付けられている番号であるCommon Vulnerabilities and Exposures(本記事では「CVE」とします)の順序に従って掲載しています。CVEの採番がされていない脆弱性情報については、Wordfenceへのリンクを掲載してあります。
※深刻度については、共通脆弱性評価システムCVSS v3に基づいています。本記事では、CVSS v3にて緊急(9.0~10.0)、重要(7.0~8.9)、警告(4.0~6.9)に区分されるもののみを掲載しており、その他の情報については、JVN iPediaなどでご確認ください。
※深刻度の数値はJapan Vulnerability Notes(本記事では「JVN」とします)及び、JVNが評価を合わせている米国国立標準技術研究所(NIST)が運営する脆弱性データベースであるNational Vulnerability Database(以下「NVD」)や独立行政法人情報処理推進機構(以下「IPA」)に準拠しています。
※本記事における脆弱性情報は、当社が把握しているものだけであり、全ての脆弱性情報を網羅できているかはわかりません。
※本記事における脆弱性情報をご利用になる場合には、必ずCVE、JVN、NVD、Wordfenceなどの情報を確認されたうえで、自己責任でご利用ください。
前述のように、WP Super Cacheは人気のあるプラグインであり、日本国内でも利用者は多数いるものと推察されます。
しかしながら、WP Super Cache自体のバージョンアップをしようと思っても、最新のWordPressで上手く動かなかったり、PHPのバージョンアップが必要であったり、設定が複雑であるなどの問題に直面することもあるかと思います。
taneCREATIVE社は、「リモートによるWebアプリケーションのセキュリティ対策をパッケージ化、首都圏大手企業に提供」している点が評価され、2021年にJ-Startup NIIGATAに選定されているWeb制作会社で、WP Super CacheとWordPressはもちろんのこと、PHP、MySQL、MariaDBについても知見を有しています。
※「J-Startup NIIGATA」とは、経済産業省が2018年に開始したJ-Startupプログラムの地域版として、新潟発のロールモデルとなるスタートアップ企業群を明らかにし、官民連携により集中的に支援する仕組みを構築することで、新潟県におけるスタートアップ・エコシステムを強化する取組です。
WP Super Cacheを使用したWebサイト制作やアップデートを含む保守管理に関しては、こちらのお問合せよりお気軽にご相談ください。
taneCREATIVEに所属する謎のトラ。