ど田舎から始めるWeb制作会社戦記  ~このページは99%ファンタジーです~

第16話 管理部課長はふらっといなくなる

彼女は管理部の課長である。
課長ではあるが、短時間正社員であり、仕事中に時々1~2時間ふらっといなくなる。
こんにちは、ビール片手に会社と逆方向の電車に飛び乗ってみたいちほうタイガーです。

「佐渡島には電車ないですよ」

…初手からのツッコミありがとうございます。
あれです。心象風景ってやつです。

お天気の良い平日の昼間にスマホの電源切って海辺でビールとか飲んで寝っ転がりたい…みたいな。

「…土日とかにやってみればいいんじゃないでしょうか?」

違うんですよ、他の人が働いているであろう時に怠けるから最高なんですよ!

「…うーん、そこはあまり理解できないですね」

…えっ…第1話の彼ともそこは意見が合っているのだけれども…我らがおかしい…のか…

「第1話の彼は海とか行かなくないですか? 貴重な休みも家で三国志とかやってそう…」

…まぁ引きこもりですからね…話がどうでもいい方向に流れ始めたので戻しまして、えー改めまして、ど田舎から始めるWeb制作会社戦記の取材です。まずは定番の質問ですが、この会社に入る前のキャリアをお聞きしてもよいでしょうか。

「元々は芸術系の大学を出てから、Web制作会社で5年ほどWebデザイナーをしていました。その後この会社が立ち上がるタイミングで第2話の彼と結婚してしまいまして…出産・育児の関係で数年間会社の業務から離れていたんですが、ようやく子育てにも一段落ついたと思うのでスタッフとして戻ってきた感じですね」

…ふむふむ、しかし現在の業務はWebデザインではないですよね…どうしてまた管理部に?

「そうですね、復帰してから1年ほどは短時間正社員でサポート係のような感じでしたけど、2年目からは管理部の課長になっちゃってますね。どうしてそうなったかは…会社の辞令ですね。『第3話の彼女が数字に弱いからフォローすべし』とか指令を受けましたね」

…そのセリフは第1話の彼に完全一致ですな…素朴な疑問なんですが、Webデザイナーじゃなくてよかったんです?

「特にこだわりはないですね。管理部でもクリエイティブなことはできますし。庭木の剪定もしますし、社内の障子を貼ったり、会社の中の備品を竹細工で作ったり、建物の修繕をしたり、おもしろいので勝手にやっています。管理部なので経費処理も楽だし」

…おぉ…今やっているのも竹細工の準備です?

「これは竹ひごという竹ざるの材料を作っている工程ですね。とはいっても今は業務ではなく趣味の時間なので、ちゃんと休憩時間や時間休をとってやってますので…」

…時々会社に居ないな~と思うことがあったけど、竹細工を作ってたんだ…

「私短時間正社員なので…お昼も兼ねて長めに時間をとって色々やってますよ。畑を耕したりしますし、山に行ってキノコを採ったりもしますよ」

…それはストレス発散手法だったり?
ということはビール片手に海辺で寝転がっているのと同じ感じでは…

「いやーどうですかねー、リフレッシュするという意味では同じかもしれませんけど、流石に休憩中にお酒は飲めないですねー車の運転もあるし。そもそも就業規則で禁止ですよ、あたりまえですけど…」

…まぁそりゃそうよね…みんな、ビール片手に海岸で寝っ転がりたかったら、有休取って徒歩で海岸へ行こうね。ゴミもちゃんと持ち帰りましょう!

「誰に言っているんですか…」

……えー管理部のやりがいとかお聞きしても?

「皆から仕事しやすいと言ってもらえた時は嬉しいですね。他には特にないですね」

…えぇー今管理部主導で佐渡に第二拠点を作ってるじゃない…そういうのおもしろくないです?

「自分が移るならやりがいはあるけど管理部は本社に残るので…発注額も大きいのでやりがいよりはミスがないようにチェックする方でいっぱいいっぱいですよ。人員に厚みが出てきている他の部署と違って管理部は人も少ないので有休もとり難いですし…」

…それで休憩時間とか、時間休とかを駆使して、畑を耕したり、山にいったりしているわけですな…

「そうですね、でもそれも限界ですね。管理部にも優秀な人を募集してほしいと思います」

…人は増えていっているのに、なんでわが社は人手不足から脱却できないんでしょうね…

「…お仕事が増えているからだと思いますよ、単純に…」

…それでは、最後に今後どうなりたいかをお聞きしてもよろしいでしょうか。

「仕事面では…まずは部長になりまして…」

…おぉー仕事への意欲が感じられるっ!

「…その上で完全週休4日制にしたいですね」

な…なんだってーーー!?

「いやだって、土日は子供の世話とか行事とか色々あるじゃないですか。でも週2日くらいは畑を耕したりしたいじゃないですか。第1話の彼も『仕事が回ればいいんじゃね?』と言ってたし」

オレ達はとんでもない考え違いをしていた…のか…

「MMRネタは流石に古すぎて伝わらないのでは?」

……ところで、夫婦で職場も一緒・趣味も一緒となるとケンカとか大丈夫ですか?

「趣味は違いますよ。養蜂の手伝いも私はほぼしていないですね。蜂に刺されたくないし。子供も蜂に刺されたら困るので。旦那には『やりたければ勝手にやれば』と伝えてます。
キノコ取りは夫婦で行きますけど、畑とか竹細工とかはソロですね。お互いやりたいことをやればいいんじゃないの?という感じ。いずれにしてもプライベートの時間が足りないですね」

完全週休4日制が実現出来たら凄いですけど…よほど優秀な経営陣がいないと難しくないです?
第1話の彼もそれは認識しているんでしょう?

「この前『CFOになれそうな人材、その辺に埋まってないかな~』とか言ってたから、認識してると思いますよ」

金山かよ!

アユミ.I

アユミ.I

属性
土属性
種族
週休4日族
称号
耕す者
フレーバーテキスト
彼女は耕す者である。
何があっても耕すことを続ける人は、世の中をより良くするだろう。
宋人有耕田者。 田中有株。兔走触株、折頸而死 。 因釈其耒而守株、冀復得兔。 兔不可復得、而身為宋国笑。(韓非子)