ど田舎から始めるWeb制作会社戦記  ~このページは99%ファンタジーです~

第13話 制作運営部課長はボンビーガール

彼女は制作運営部の課長である。大手クライアントの保守担当をしながら、課全体の業務コントロールに気を配る。
頑張り系ではあるが、ボンビーガールである。
こんにちは、精霊なので人間界のお金に興味が持てないちほうタイガーです。

「私今夜アップ指定の作業中なので…隣でお酒を飲まれると羨ましくて気が散るんだけど…」

…精霊だってね、飲まないとやってられない日もあるわけですよ…百毒不侵のスキルレベル1なんで実際はそれほど酔ってないですし…作業しながらでいいんで取材協力お願いします。

「…まぁ大丈夫ですけど、こっちエナジードリンクで素面なんで、あまり面白い事言えないかもしれませんよ」

大丈夫、存在自体がネタだから。お互いマルチタスクでスパートかけましょう。

「そっち酒飲みながら話してるだけじゃん!マルチタスクじゃないし!」

…マルチタスクは大変だなぁ…はい、それではど田舎から始めるWeb制作会社戦記の取材を開始したいと思います。もう全員に聞いている質問ですが、まずはこの会社に入る前は何をしてたんでしたっけ…確かイベント系だったような…。

「この会社に入る前は別に普通に働いてた感じで…高校卒業してから専門学校に通いつつ個人事業主として照明技師を数年やっていました。小さなライブから大きなイベントまで裏方として働いていた感じですね。照明技師なんですけど人手不足の世界なのでライブハウスや個人のミュージシャンのWebサイトやLPなんかも独学で作ってました」

…それ普通じゃないから…それでどうして島流しに?

「私、生まれは佐渡島なんですよ。育ちは東京なんですけど…なので子どもの頃から佐渡に移住したいというのが夢で、いつもそれで親と喧嘩していたんですよ」

実はUターンだったということね…まぁ…親御さんからすれば佐渡島に行ってどうするの?って感じだよね…働く場所あるのかとか…。

「そうそう、まさにそんな感じのことを言われてて、でも佐渡に移住することは昔から決めていて。そんなときに東京で開催されている佐渡部という活動に参加していて佐渡への移住を目指す仲間が出来て。よしトップバッターとして移住してやるぞって感じで、勢いで佐渡に土地と家を買って…今そこに住んでるわけですけど」

え…それってこの会社に就職する前に土地と家を買ったということ…?
それ相当無謀じゃね?

「安かったんですよ…結構広い土地建物合わせて50万円だったので」

安っ!そこはかとなく地雷の匂いがするんですけど…まぁ話を進めましょう。それでどうしてこんな会社に入ってしまうことになったんです?

「それも佐渡部の関係で…確か移住を目指すエンジニアの子が就職先の候補としてこの会社を検討していたんですよ。それで第1話の彼と東京で面談するということになって、興味本位で付いて行ったのがきっかけですね」

…つまり最初はこの会社に就職とか考えてなかったと…

「そうですね。よくこの会社と第1話の彼の噂は聞いていたのでどんな人なのかなと。それで付いていったら集合場所が会社じゃなくて、会社の近くの濃い感じの居酒屋で。一緒に飲んでる間になぜかエンジニアのヤツではなくて私の方が内定をもらっていた感じです。正直飲み過ぎて細かい話の流れは覚えていないけど…」

…うわー想像できる。容易に想像できるけど…それ素面に戻ってから焦らない?

「いやホントその通りで。次の日『昨日わたし飲み屋で内定もらいました…よね』と第1話の彼に確認のメッセージしたら『その通り』と回答が来て…これも縁かと思って流れにのってみることにしたら、こんな感じになっているというか…」

…ちなみに本来の面談の相手だったエンジニアの子はどうなったんです?

「第1話の彼と話をしたことが理由かは不明ですけど、突然『もう少し東京でスキルを磨いてから島へ行く』とか言い出して某有名ナビゲーションアプリの会社で頑張っていましたね。でも今年の春とうとう佐渡島へ嫁を連れて移住してきたんですよ!」

…あれ…今年の春に当社にそんなエンジニア入ってきてない気が…

「そうですね、ヤツは今地域おこし協力隊で頑張ってますね。でも嫁を連れてきてくれたんでオッケーです。その嫁が同じ制作運営部で頑張ってくれていて超助かってます。ヤツより優秀に違いない」

…もうわけわからん…まぁこの会社そんなもんよね…それで、この会社の数年間はどうでしたか。

「最初は技術面で不安でしたし、今でもわからないことだらけで毎日調べたり教わりながらですけど、やりがいは感じてますよ。大きな会社さんのWebサイトの運用やCMSの保守も楽しいですけど、特に佐渡島内の案件に関われるのはいいですね。今度『さどポン』のリニューアルに企画から携われることになったので、滅茶苦茶やる気あります!」

そういえば課長に就任したのは入社2年目頃でしたよね。そのあたりについて思うところはありますか?

「いやほんとそれですよ。わたしでいいのかと。でもこの会社の役職に対する考え方、『やる意志があってやれる能力があればやれば?』って感じなので、もうこのまま突き進もうかなと」

おぉー将来は女性役員第1号ですかね。第1話の彼は喜びそうですね。

「いや…正直言って役職名とかには興味ないし、第1話の彼に喜ばれるかもどうでもよくて…でも自分が必要とされて役に立てる仕事ならやりがいはあると思ってます。あとお金を稼がないといけないので給料を上げるために全力を出さざるを得ないという…」

…伏線回収キター!…やはり50万円の土地建物ですか…?

「…この島は車必須なのでまず車庫の整備は必要だったし、最低限の水回りや雨漏りの修繕をしたらお金が…奨学金の返済もまだ残っているし…なので外に飲みに行くのもお財布と相談の日々ですよ…」

…切ない…ボンビーガールは切ない…

「いやでもプライベートは超充実してますよ。時間が足りなくて困ってるくらいです」

ほうほう…休日とかは何をしてる感じです?

「今一番力を入れてるのは、完全趣味のYoutuber活動ですね。実家がある高千を中心に佐渡のPRをする『高千んもん』ってチャンネルやってます。あっ…ここリンク貼ってもらえると嬉しいです」

…承知した。まぁこのサイト実装しているの制作運営部だけどね。そういえば『高千んもん』は結構島内で知られている気もする…

「この島、ありがたいことに応援してくれる人が多くて…反響がスゴイ。そうするとどんどん人間関係も広く深くなってきて凄くおもしろいです。つい先日も、知り合いにいきなり「光るキノコ」を見に行こうと言われて夜の山についていったらマジで光ってておもしろかったり。真更川の山奥に実家のルーツがあるんですけど、木喰上人さんが修行したお寺があるということで行ってみたら、石碑に実家の屋号が残っていてビックリしたり。あとは知り合いからお話をいただいてサドテレビの「AWGP TV」という番組にサブMCで出てたりします」

もうツッコミどころ満載なんだけど…サブMCをしてるというAWGPで検索かけてみたら「佐渡市でプロレス大会を開催する」とか「マスクド・アマビエ疫病退散」とか出てきたんだけど…プロレス関係の番組?

「いえ全く。プロレスのイベントを呼ぶこともありますけど、基本的には酒飲んでだべってるだけの番組ですね」

…もはや意味不明だが…あえて自由連想法で話を繋げようとすれば…やっぱりイベントには関わって行きたい感じです?

「そうですね、イベントは好きなので積極的に関わっていきたいのですけど、コロナであまり関われていないのが残念ですね。今度この会社がロードレースのプロチームのユニフォームスポンサーになるらしいので、ロングライドのイベントとかに呼んでもらったりして関われると嬉しいですね」

…あーこの前、第1話の彼が『さいたまディレーブの社長にカツアゲされた…せっかくだから佐渡に呼ぼう』とか言ってたわ…多分会社で費用を負担してでも何らかの形で呼ぶんじゃない?

「この島、ロードバイクではそこそこ有名ですからね。期待大です」

逆に、数年間の佐渡生活でここは不便だなとか感じるところはありますか。

「唯一の弱点はお酒を飲んだ時の足がないことですね。代行さんを使うのはなかなかお金が…」

それ、佐渡島の問題というよりボンビーの問題じゃねぇ!?

「……代行さんを気兼ねなく使えるお金が欲しい」

…人間って生きていくだけでもタイヘンダヨネ…

ユウコ.A

ユウコ.A

属性
太陽属性
種族
楽天家族
称号
刹那の生を求める者
フレーバーテキスト
彼女は刹那を生きようとする者である。
過去や未来に囚われず生きようとする者を笑うことは愚かである。
逢佛殺佛、逢祖殺祖、逢羅漢殺羅漢、逢父母殺父母、逢親眷殺親眷、始得解脱、不與物拘、透脱自在(臨済録)