ど田舎から始めるWeb制作会社戦記  ~このページは99%ファンタジーです~

第20話 バックエンドエンジニアは旅を続ける

彼女はバックエンド開発部のリーダーである。
日々第1話の彼がとってくる先端案件のPGとして大変な思いをしている。
こんにちは、なぜかドイツでお犬様とかけっこをしているちほうタイガーです。

あっ…お犬様の名前を伺っても?

「ルイです」

…ドイツなのに名前がフランスっぽい!
って言ってる間に抜かれたー!

「…それで、今日はどうしてここにいるんですか?」

…一応、精霊ってことなので瞬間移動でひとっとびですよ。超スピードでごまかしているわけじゃないですよ? 要件はど田舎から始まるWeb制作会社戦記の取材です。

「いいなぁ。私もひとっとびで佐渡へ行けたらなぁ…」

あ…そういえば入社してから一度も他のスタッフとリアルで会ってない感じです?

「はい。ずっと完全リモートワークですね。というより入社してから日本にすら行けていません」

…おおぅ…しかしどうしてドイツから、わざこんなど田舎のWeb制作会社に入社してしまったんです? できれば入社前のキャリアから教えてください。

「前職までは全く違う仕事をしていました。大学を出た後は会計事務所で4年ほど働いていました。そこからオーストラリアやドイツへワーキングホリデーに行ったんですが、ベルリンで夫と会いまして、結婚してそのままドイツに住んでいる感じです」

ほうほう、あれ……旦那さんドイツの方だっけ?

「いえ…イタリア人です」

…フシギナ縁デスネ…それでどうしてWebの世界に?

「夫もIT系なので、ドイツでPHPを学んで、自分でECサイトを構築して、WordPressのテーマを作って売ったりしてました。今でも日本の制作会社さんとかが買ってくれているので経済的に助かっています」

…えっ…それ就職する必要なくない? それもわざわざこんな辺鄙な田舎の制作会社に…

「WordPressのテーマサイトも競合がどんどん出来てますし、一人で運営し続けるのも難しいかなと。なんでこの会社だったのかは、もともと夫婦共に海や山、自然が好きなので、日本の島に移住しようと思っていたんです。そこでちょうどよい大きさに感じた佐渡島を候補にして、求人を探していたら会社のWebサイトを見つけたという流れです」

そういえば第1話の彼が『フィルタリングしてるのに海外からメール来た…』とかつぶやいていた気が…

「当時の会社のサイトは海外IPフィルタリングしていたみたいで、フォームから送れなかったので、なんか調べながらなんとかメールを送った記憶があります。もう数年前でよく覚えていませんけど」

…海外IPフィルタリング突破されてる!?

「今はもう海外との取引もあるので、海外IPフィルタリングはしてないと思います」

…そ、そうね…それで入社してからどんな仕事を担当してますか?
イメージでは第1話の彼にいきなり先端案件に投入された人というイメージですけど…

「えっと…入社当初は某出版社のECサイト構築をメインPGでやらせてもらったり…」

…新人を前線にぶち込む…当社あるあるですな…

「その後は某業界団体の巨大ECサイト構築で…」

…あれは泥沼の案件でしたなぁ(遠い目)…

「やっと終わったと思ったら某地方の観光ポータルサイトのCMSカスタマイズと機能実装をやらせてもらってますね。DeepLを始めとする複数の翻訳サービスのAPIをたたいて外国語ページを生成する機能の開発とか…あと社内ERPの実装もせかされています」

…鬼畜の所業…実に第1話の彼らしい…

「…はい。でも、携わらせてもらえる内容も、一緒に取り組むメンバーも技術レベルが高いのは素直にうれしいです」

……当社の常識人枠っぽい受け答え…しかし、残念ながらあなたはネタ枠に位置付けられているのをご存じです?

「いえ…でも私自身、変わった人生を歩んでいるなとは薄々思っています」

…ふむふむ、自覚があったようでなによりデス。それでは、海外からのフルリモート社員から見たこの会社の良い所がもしあれば教えてください。

「うーん。さっきお伝えした通り技術レベルが高い人たちと働けていることと、みんなが丁寧で優しいことですかね」

…逆に、良くないところ、困ったことなどはありますか?

「そうですね…オフィスへ行ったことがないので皆さんが言っている『寒い』というのはちょっとわからないんですが、やっぱり時差があるので急な相談ができないところはたまに困りますね。例えば、こっち(ドイツ)の時間で始業の9時は、本社でいうとサマータイムでも16時なので、本社の皆さんへ私がリアルタイムで相談できるとしたら2時間だけになってしまうんですよね。会社の問題というより時差の問題ですけど…」

…海外ならではの悩みですな。

「そうですよね。時差については一緒に働くメンバーにも申し訳ないなと思うこともあります。あとはやっぱり直接会えていないことですね」

ちなみに佐渡島へ移住する計画はまだ継続していたりします?

「住みたいなぁとは今でも思っていますよ。ただ、最初に移住を準備していた時はコロナ発生で出来なくなりましたし…実はこの前の3月も日本へ帰る予定を立てていたんですが、国際的な事情からNGになったりして…ことごとく機会が無くなっているんですよ…なので今度夫の故郷であるイタリアに移住する予定です」

…おおぅ…結婚も住居も仕事もグローバルすぎる…
そろそろインタビューも長くなってきたので、最後に今後の展望を教えてください。

「インフラ周りの勉強をしたいと思っています。もともと今でも使っているPHPやワードプレスの技術は独学で身に着けたので、もう少し幅を持たしたいなと。ただ、案件が多すぎてなかなか勉強できていないので、短時間勤務に変えれないか部長に相談中です」

そうでしたか…。案件が多すぎる件は第1話の彼にクレームを入れていただくとして…いろいろ落ち着いてきたらぜひ佐渡本社にも遊びに来てください。

「もちろんです。直近の目標は『みんなに会う』にしようかな」

クミコ.M

クミコ.M

属性
風属性
種族
流転族
称号
旅を続ける者
フレーバーテキスト
彼女は時代の流れで島にたどり着けていない。しかし運を嘆く必要もまたない。
A journey is like marriage. The certain way to be wrong is to think you control it. (John Ernst Steinbeck)