取締役
ヨシヒト.K
ロシア文学の大家、戦争と平和で有名なレフ・ニコラエヴィッチ・トルストイが文筆の傍ら養蜂家でもあったことは世界的に有名なことかもしれないが、佐渡島というど田舎のWeb制作会社にも、デザインの傍ら養蜂に取り組む人間がいることはおそらくほとんど知られていない。
「うぉ…ビックリした…なんでココにいるの!」
よくぞ聞いてくれました。
先週ようやくオフィシャルサイトのキャラクター紹介(スタッフ紹介)の1話を書き上げたわけですよ。「なろう」で検索してヒットした某小説サイトで数作品読みまして、それっぽくちゃんと書いたつもりだったんです。
ええ、仕事ですからね。頑張りましたよ。
そうしたらですね、チェックをした1話の彼が言ったわけですよ。
『これ、なろう系じゃなくて、村上春樹を真似しようとして失敗しました的な感じゃない?』
『うーん、別にいいんだけど…こういうテイストでスタッフ全員分書けるの?』
『登場人物が多い写実主義だと大変だよ、戦争と平和読んでみたら』
…と。
戦争と平和→トルストイ→養蜂家→今ココ(二人目の取材)という感じです。
完璧な説明をお聞きいただきありがとうございます。
「いや…トルストイって誰…戦争と平和って何かのキャッチコピー?」
…中学校とか高校とかで読書感想文とかの課題図書になってませんでした?
「高校時代現国の点数いつも一桁台だったので…」
………
この会社に普通の人間が居ないことはわかっていたことじゃないか…
だが一言だけ言わせて欲しい。
きっと頑張って卒業されたんでしょうね。
「照れるな…」
褒めてねぇし。
とにかくですね、第1話を経て私は今一度『なろう系』を再度分析したわけです。
その結果、なろう系とは『テーマ無し』『情景説明無し』『オチ無し』の三無主義であると結論付けました(一部例外あり)。
自分で読むまでもなかった。ググったらまとまっていたでござるよ。
「『なろう系』ってのもよくわからないんだけど、はちみつ食べてみる?」
いただきます!モグモグ…
これで説明が済むなんて、なろう系は確かにラクー!
本来ならここで、『彼は手袋を新しいものに変え紙コップを用意すると、おもむろに蜂の巣の1欠片を巣箱から取り出して、手で絞って渡してくれた』程度の説明は最低限必要なところなのにっ!
「多分あれじゃない?こんな自社オフィシャルサイトのスタッフ紹介にまじめに時間かけても生産性が落ちるだけだから、適当でいいってことじゃない?」
そういう意味だったの!?
よし取締役がそう言ったということで、この路線で行こう。
これなら30分で1話書けるかもしれない。
「それで、第2話の取材って何を話したらいいんだっけ?」
そうですね。どうせ誰も読んでいないページでしょうし、フランクにいきましょう。
ぶっちゃけなんで養蜂家なんです?
「説明するとちょっと長くなるんだけど…」
えっ…長くなるんですか…そうですか…一応お聞きしましょう。
「最初は半農半ITを実践したくて、不耕起栽培+炭素循環農法をやりはじめたんだよね。でも諸事情あって断念しまして」
そういえば最初の頃そんなこと言ってましたね。ただ放置しておけばいい自然に優しい最高の農業がどうとかこうとか…。
ちなみに断念した理由をお聞きしても?
「効率を重視して家の近所に畑を作ったのが間違いだったみたいで…親が勝手に肥料を撒いたり、耕してしまったり…やめてくれと言っても逆に農業のイロハを語られるので…」
まぁ普通に農業をされている方ならそうなりますよね…それで親子喧嘩になるから辞めたと…。
「そう、そんな時に知人に養蜂をすすめられて…本を数冊読んで巣箱を買って始めてみたら3ヶ月で全滅させてしまって…」
『全滅』って言葉、この世界のリアルでは滅多に使わないよね…。
それで火が付いたと。
「火が付いたというより…全滅させてしまった後悔の念がものすごくて。徹底的に勉強しなおして…次の年、改めて蜜蜂を購入し、全滅させること無く夏を超え、はちみつを収穫し、パッケージも自分でデザインして、出荷できた時には感動したなぁ…」
第1話の彼にも自然と共に生きることで得られる感動を伝えてもらえないでしょうか…
「もちろん伝えたよ。養蜂ってのはね壱畳のスペースで始められる空間農業なんだ。巣箱を置いた地点から半径2kmが蜜蜂の活動範囲で農場となるわけ。直径4kmの自然環境からミツバチが集めてきた花の蜜がブレンドされるから、地域によって味わいが異なるんだ。いわばその土地毎の地域ブランドだね。地域とコラボレーションでき秘められた地域資源の活用ができる事業と考えればこれは凄いコトじゃないか。蜜蜂を日常の生活に組み入れたことで、いつどこにどんな花が咲くのかにも興味が湧いたよ。佐渡島の花暦を自分で作って季節の移り変わりをより強く感じる事ができるようになった。自然が豊かな島という環境を拠点に島の蜂蜜の価値を高めていきたいし、子供が大人になって佐渡に帰ってくることがあれば、1つの職業として選択の幅を広げられると思うんだ。これからも蜜蜂との生活を楽しんでいきたいね」
それで第1話の彼はどう返答したんですか?
「『へぇーそうなんだ』って言った」
へぇーそうなんだ…